田中秀典さんを考察する。〜クジラとペンギン論を添えて〜
「関ジャニ∞の楽曲は、田中秀典氏抜きにして語ることはできない、といえる。」
ということは他のはてなブログを拝見していて多くの記事に挙げられているし、n番煎じということは承知の上で私なりに考察してみようと思います。
考察なのでちょっと論文チックな文末にしてみることを先に言っておこう。
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■田中秀典氏の生み出した名曲
<作詞作曲>
ブリュレ
冬恋
エネルギー(micro+grande名義)
<作詞>
ローリングコースター
クジラとペンギン
夕闇トレイン
<作曲>
パンぱんだ
改めて羅列してみると恐るべきラインナップ。
個人的に好きな曲のプレイリストを作って(さらに定期的に更新して)、楽しんでいるのだが、これらの楽曲は好きな曲プレイリストの常連ばかりで、”田中秀典”という偉大な作詞・作曲家に足を向けて寝られない。
(最近では田中秀典プレイリストを作って楽しんでいる。)
田中秀典氏の作詞曲においては、野間康介氏が作曲していることが多く、また、エネルギーは田中氏・野間氏のユニット「micro+grande」名義での楽曲提供となっている。
※野間康介氏も関ジャニ∞の多くの楽曲で作曲・編曲に携わっていらっしゃる、大変偉大な存在なのだが、それはまた別の機会に。
田中氏と関ジャニ∞の関係は2009年のアルバム「PUZZLE」に遡る。
このアルバムの中でも特に人気の高い「ローリングコースター」「ブリュレ」の2曲を手がけていることがまず奇跡。
そこから畳み掛けるように冬恋→モノグラムと楽曲提供している。
最近ではダンスナンバーとして定評のある「WASABI」や年下組の新境地を切り開いた蔦谷好位置氏作曲の「ノスタルジア」など、言わずとも伝わる振り幅の広い名曲ぞろいだが、私が特に声を大にして伝えたいのは、これだ。
「クジラとペンギンは後生に語り継ぐべき名曲」
「クジラとペンギン」は2013年12月にリリースされた「ココロ空モヨウ」のカップリングとして収録されているバラードである。
野間康介氏との名タッグによって生み出されたこの曲は、とにもかくにも、とんでもない名曲である。
①ファンタジーかつ現実感のある世界観
「クジラとペンギン」というタイトルの通り、 世界観はクジラとペンギンの恋を描いている。
Aメロ1番はクジラ
Aメロ2番はペンギン
サビは”僕ら”を一人称としてクジラとペンギンの目線で描かれている。
Ⅰ「出逢ってしまった」「結ばれない恋」
⇔「だけどずっと愛してる」
Ⅱ「言葉じゃ通じ合えない」「抱き合う術もない」
⇔「おんなじだ 涙の色 こころが感じたモノ」
Ⅲ「見て来た景色が違っても」
⇔「大丈夫 つながっているさ」
Ⅳ「思い出が増えるだけ苦しくなる」
⇔「許す限りの時を一緒にいたいよ」
前者の歌詞のように全編を通して”叶わぬ恋”を歌っているのだが、後者のように対比的な言葉も同時に用いられている。
表題曲のココロ空モヨウが快晴とするならば、夕暮れを思わせる優しいバラード調の曲に乗せて紡がれている。
「結ばれない恋だけどずっと愛してる」
サビにはこのフレーズが使われており、また、渋谷さんのソロパートであるラストのサビでは、
「結ばれない恋だってずっとずっと愛してる」
とより強調する形で繰り返されている。
結ばれて初めて成立するのが”恋” ⇔ 相手を思い続けることが”愛”
であり、クジラとペンギンはお互いに”愛”し続ける、思い続けるというのがサビに表されている。
ここでいう”結ばれる”というのも、ただココロが両想いになるということだけでなく、言葉を交わしたり、抱き合ったりというココロ以外の通じあいも含めたことなのではないだろうか。
(※先述した、叶わない恋を表現するために用いられた歌詞Ⅱより考えられる。)
だからこそ、本来同じ意味を持つ恋と愛が対照的に聞こえるのだと思う。
この世界観はなにもクジラとペンギンだけでない。
自分にも投影できるようなどこか現実味のある世界観も魅力だろう。
② 英語詞による世界観の広がり
この曲において用いられる英語詞は以下の通りだ。
live with you
how long...go on...
before day break :夜明け前に
my sweet hometown :私の故郷、生まれた場所
overhead :上に、空に
これらの英語詞の中で特に上二つについては繰り返されていることから印象的である。
どのくらい経っただろう、いつまで続けられるだろう。
ただ僕は君と一緒に生きたいんだ。君と...。
日本語として言葉にすると強く、重く聞こえるフレーズを、英語の、しかもコーラスとして挟み込むことで軽く、ふんわりとした言葉の響きを持っていると感じる。
③パート割りの妙
丸山「途方もない旅の果て僕ら出逢ってしまった
結ばれない恋だけどずっと愛してる」
大倉「居心地はどう? 僕の背中
思ったほど悪くはないだろう?」
村上「いつのまにか 眠ってたみたい
ゆらゆらと君の背中で」
横山「夢見てたんだ 生まれた場所の夢
何故かずっと君もそばにいた
my sweet hometown」
安田「見て来た景色が違っても 見上げた星座(ほし)は回ってる
大丈夫 つながっているさ まんまるな水平線」
錦戸「この風が泣き止む瞬間(とき)
空にオーロラがかかる」
渋谷「結ばれない恋だってずっとずっと愛してる」
上記は、歌詞の中から、それぞれのメンバーの印象的なパート割りを抜粋したものである。
丸山さんの切なく甘い歌声から始まり、力強くも儚い渋谷さんで終わることがまず罪である。
大倉さんの低音と、大きなイメージは、クジラの「僕の背中」を歌うにはピッタリであるし、反対に、パブリックイメージは”しっかり者”の村上さんに「いつの間にか眠ってしまった」ペンギンを歌わせることは、村上さんをよく知った上でないとできない。
郷土愛の強い横山さんによる「生まれた場所」「my sweet hometown」も、優しく宇宙のようなイメージのある安田さんが、空を見上げながら「大丈夫」と伝える姿も強く頭に浮かぶし、錦戸さんの歌声でオーロラがかかりそうな気さえする。
ソロパートにおいてはそれぞれの声を持って歌詞の意味を増幅させており、パート割りが効いている。
サビを含め全体を通してやはり渋谷さんの声が強く聞こえるが、他メンバーのコーラスが特徴の一つでもあると思う。(先述した英語詞のコーラスも響いてくる。)
半ば強引な部分もあるし、パート割りについては田中氏が関わっているかは定かではないが、 クジラとペンギンは、歌詞と曲により作り出された世界観と、関ジャニ∞の7人だからこそ表現できる世界観が合わさった魅力に溢れているということが伝われば嬉しい。
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田中氏の魅力を伝えるつもりが、大半がクジラとペンギンが大好きですという話になってしまいました。
ミディアムバラードのカップリング(クジラとペンギン・ロイヤルミルクストーリー、etc...) & ダンスナンバーのアルバム曲(WASABI、Masterpiece、Sorry Sorry love、etc...)大好き芸人なので、ぜひまた語りたいと思います。